中古資産の減価償却の算定方法は⁉ 具体例も踏まえて税理士が解説します!

車

法人や個人事業主の方は事業で使用する機械装置・器具備品・車両運搬具等の減価償却資産を新品ばかりではなく、中古で購入することもあると思います。実は新品を購入するよりも中古を購入した方が、購入した期において節税対策にもなります。なぜ中古の減価償却資産を購入すると節税になるかについて説明致しますので、減価償却資産の購入をお考えの方はご一読頂けたら幸いです。

1. 減価償却費

減価償却とは減価償却資産の取得に要した金額を、その資産が使用できる期間にわたって定額法・定率法等の償却方法によって費用配分する手続きを言います。この場合の使用可能期間ですが実務上では税務署が公表している減価償却資産の耐用年数表を参考に、各々の減価償却資産の耐用年数を決定しています。

中古減価償却資産は購入した時点で既に何年か使用しているため、新品の減価償却資産と同様に法定耐用年数を用いることは適切では無く、使用年数をきちんと考慮して残存耐用年数を把握する必要があります。このことから中古の減価償却資産は新品の減価償却資産に比べ耐用年数が少なく見積もられるため、1年で計上する減価償却費を多く計上することが可能です。

2. 耐用年数の算定方法(原則法)

中古の減価償却資産を取得した場合の当該減価償却資産の耐用年数は、原則として事業の用に供した時以後に使用することができると合理的に見積もられた年数によります。しかし減価償却資産の使用可能年数を合理的に見積もることは難しいため、実務においては下記の簡便法で算定することがほとんどです。

3. 耐用年数の算定方法(簡便法)

簡便法では購入した中古の減価償却資産が購入先で何年間使用されて売却されたかの情報(経過年数)を基に残存耐用年数を算出する方法となります。

※算出した年数に1年未満の端数があるときは端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。

⑴法定耐用年数の全部を経過した資産

法定耐用年数×20%

※法定耐用年数を経過年数が超えていても1年で償却することができないのでご注意ください(最短2年で償却することになります)。

⑵法定耐用年数の一部を経過した資産

(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

※残存耐用年数に購入先が当該中古の減価償却資産を使用した経過年数の20%に相当する年数を加算する形になります。

4. 具体例

【前提】3月決算の法人が6/1に中古自動車(小型車以外)を1,000,000円で購入しました。
※新品の自動車(小型車以外)を購入した場合の法定耐用年数は6年です。

⑴法定耐用年数の全部を経過した資産

中古自動車を販売した方が既にその車を7年2ヵ月使用していた場合の、中古自動車の耐用年数と減価償却費は下記の通りです。

①耐用年数 :6年(法定耐用年数)×20%₌1.2年⇒2年 ※算出した年数が2年に満たないため。
②減価償却費:1,000,000円×1.000(定率法)×10ヵ月÷12ヵ月₌833,333円

⑵法定耐用年数の一部を経過した資産

中古自動車を販売した方がその車を3年7ヵ月(43ヵ月)使用していた場合の、中古自動車の耐用年数と減価償却費は下記の通りです。

※今回の事例では経過年数に1年未満の端数があるため、耐用年数を計算する際は年数ではなく月数で算定します。よって法定耐用月数は72ヵ月(6年×12ヵ月)となります。

①耐用年数 :(72ヵ月₋43ヵ月)+43ヵ月×20%₌37.6₌3年1ヵ月 ⇒3年 ※1年未満の端数を切り捨てます。
②減価償却費:1,000,000円×0.667(定率法)×10ヵ月÷12ヵ月₌555,833円

5. 資本的支出をした場合

⑴再取得価額×50%<資本的支出の場合

中古資産を購入した際に事業の用に供するために資本的支出(固定資産の価値を高めたり、耐久性を増すために行った支出をいいます。)をした場合には注意が必要です。

その資本的支出の金額がその中古資産の再取得価額(当該中古資産と同じ新品の減価償却資産を取得するとした場合のその取得価額をいいます。)の50%相当額を超える場合には、上記2.3によって耐用年数を算定することができず法定耐用年数が当該中古の減価償却資産の耐用年数となります。

よってこの場合には税務上は中古資産を購入したとしても新品の減価償却資産を購入した場合と全く同じ取り扱いがされることになります。

⑵取得価額(中古の減価償却資産)×50%<資本的支出≦再取得価額×50%の場合

購入した中古の減価償却資産を事業の用に供するために支払った資本的支出の金額が中古の減価償却資産の取得価額の50%相当額を超える場合には、上記の3で説明致しました簡便法によって使用可能期間を算出することはできません。しかし資本的支出の金額が再取得価額の50%相当額以下の場合には、下記の算式によって算出した年数を耐用年数とすることができます。

①算式:(A+B)÷{(A÷C)+(B÷D)}

A:中古資産の取得価額
B:資本的支出の価額
C:中古資産につき簡便法により算出した耐用年数
D:中古資産に係る法定耐用年数

➁具体例

中古の減価償却資産(経過年数10年)を2,000万円で取得し、当該資産を事業の用に供するために資本的支出として1,200万円を支払ったとします。当該中古の減価償却資産と同じ種類の新品の減価償却資産(法定耐用年数30年)を購入すると3,000万円かかる場合の当該中古減価償却資産の耐用年数は下記の通りになります。

A=2,000万円
B=1,200万円
C=(30年-10年)+10年×20%=22年
D=30年

【判定】
(a)中古の減価償却資産の取得価額×50% 2,000万円×50%=1,000万円
(b)資本的支出             1,200万円
(c)再取得価額×50%          3,000万円×50%=1,500万円

⇒(a)<(b)≦(c) ∴適用可能です。

【耐用年数】
(2,000万円 +1,200万円)÷{(2,000万円÷22年)+(1,200万円÷30年)}=24.44年⇒24年

6. まとめ

今回は中古の減価償却資産を購入した場合の減価償却費の計算の仕方について詳しく解説してみました。新品の減価償却資産を購入するよりも大きな節税効果があります。

例えば上記4の事例で新品の車を6月1日に購入した場合、法定耐用年数が6年であるため減価償却費は277,500円(1,000,000円×0.333×10ヵ月÷12ヵ月)に留まります。もし新品にこだわりがない場合には節税対策の1つとして中古資産の購入も検討してみることをお勧め致します。

しかしこの場合、気を付けないといけないこともあります。それは期末直前に節税のために購入しても効果は薄いという点です。減価償却費は月割りで計算するため3月決算法人が3月に中古資産を購入しても【1ヵ月/12ヵ月】分しか計上されないため早期に計画し実行する必要があります。

税理士事務所スプリングではお客様の税負担が少なくなるように様々な節税案を注意点も伝えながら提案しています。このブログで弊所がお客様に提案した節税案も記載していく予定ですので、他の記事もお読み頂けたら幸いです。弊所は新設法人から年商億を超える会社まで様々な業種の法人や個人事業主のお客様の顧問業務を対応しております。ご相談等がございましたら、お気軽にご連絡ください。