中古のマンションを購入した場合の減価償却費の算定方法を説明します!

マンション

近年、ワンルームマンション投資に挑戦している20代~30代の方が増えている印象を受けています。弊所のお客様もワンルームマンション投資を始めて所得税の確定申告が必要となり依頼してくださる方も多くいらっしゃいます。不動産投資は1棟を購入するには多額の資金が必要であるため、まずはワンルームマンション投資から始めてみることも良い選択だと思います。その際に新築のマンションで始めるか中古のマンションで始めるかを決めることは非常に重要です。

もし投資目的で中古のマンションを購入した場合、確定申告で困る事項があります。それは「売買契約書では建物と建物附属設備の内訳が分からない…。」という問題です。なぜ分からないと困るのかとその対処法について記載致します。ワンルームマンションを始めてみた方や、これから始めようとお考えの方は参考にして頂けたら幸いです。

1. 耐用年数が異なります

建物と建物附属設備(電気設備・給排水設備・ガス設備・冷房や暖房設備等)では減価償却の耐用年数が大きく異なります。

建物(住宅用・鉄筋コンクリート造):47年 ⇒ 定額法の償却率は0.022です。
建物附属設備(ガス設備)     :15年 ⇒ 定額法の償却率は0.067です。

したがって同じ金額を支払っても建物に該当するか、建物附属設備に該当するかで1年で計上できる減価償却費が大きく差が出てしまいます。中古マンションの場合には上記の耐用年数を使用するのではなく中古資産の耐用年数を算定する必要がありますが、建物に該当するよりは建物附属設備に該当した方が減価償却費を多く計上することが可能です。その増えた減価償却費の金額だけ利益を圧縮して節税になります。

2. 新築マンションを購入した場合

新築マンションを購入した場合には、購入先に当該マンションの工事明細書を依頼するともらえるため、すぐに建物と建物附属設備の内訳を把握して各々の減価償却費を計算することが可能です。

こちらの明細書は証憑資料となるため確定申告が終わっても捨てないように保管していてください。後日、税務調査の際に工事明細書が無いと減価償却資産の内訳を否認される恐れがあります。

3. 中古マンションを購入した場合

一方中古マンションを購入すると、売買契約書は売却金額が一括して表示されているため建物と建物附属設備の内訳を把握できません。また購入先が個人の方の場合には過去に新築のマンションを購入した際にもらった工事明細書を保管していないケースが多く、新築マンションを購入した場合と比べ建物と建物附属設備を分けることが困難になります。何も対策をしなければ全額を建物として減価償却計算をすることになってしまいます。

その場合の解決法の1つに所有するマンション所在地の市役所や区役所に再建築費評点数算出表をもらって内訳を計算する方法があります。再建築費評点数算出表は公的機関が物件ごとに算出しているため、これを用いて計算することは過去の判例でも合理的な方法として認められています。

4. 再建築費評点数算出表

⑴再建築費評点数とは⁉

再建築費評点数とは、家屋に使用されている資材や施工量等に基づき、「固定資産評価基準」に定められている標準評価点数によって算出した点数のことを言います。

毎年1月1日に建物等の不動産を所有している人には固定資産税が課されます。市区町村は毎年の固定資産税を算出する際に家屋の評価額を算定する必要がありますが、その際に再建築費評点数を用いて計算しています。この資料を手に入れることができれば、建物と建物附属設備を分けることが可能となります。

⑵手続き

再建築費評点数算出表を手に入れるためには、中古マンションが所在する市役所又は区役所に固定資産評価情報開示請求書を提出してください。開示請求ができる人は固定資産税・都市計画税の納税義務者、納税義務者の相続人、これらの者から委任を受けた人に限られます。

<注意>市区町村によって対応が異なりますので詳しくは該当する地方公共団体にご連絡ください。

5. 計算例

【中古のマンションを1,000万円(家屋部分)で購入した場合の建物と建物附属設備の資産分解】

資産分解

再建築費評点数算出表を見ると当該中古マンションの評点数の総数は10,333,383点であり、そのうちの84.30%が建物部分であり、15.70%が建物附属設備であると把握できます。よって中古マンションの購入代価である10,000,000円を下記のように建物と建物附属設備に資産分解できます。

 建物    :10,000,000×84.30%=8,430,000円
 建物附属設備:10,000,000×15.70%=1,570,000円

6. その他の方法

⑴建築コスト情報

財団法人建築物価調査会が発行した建築コストを参考資料として建物と建物附属設備の割合を決める方法です。しかし過去の判例で上記4の再建築費評点数算出表に基づき算出される工事費の割合によって区分する方法がより合理的であるとされたため、再建築費評点数算出表が取得できなかった場合の最終手段として検討して頂けたら幸いです。

⑵否認された方法(参考)

①同業他社の物件から見積もった建物本体及び建物附属設備の価額割合を算定し、建物を70%、建物附属設備を30%とした方法。
➁新築時の原価構成イメージを基に建物と建物附属設備の価額割合を算定した方法。
【例】建物の構造体(35%)、建物の仕上げ(35%)、電気設備(10%)、空調設備(10%) etc.

⑶国税庁の主張

国税庁は中古のマンションの建物本体と建物附属設備の取得価額を合理的に区分できない場合には、建物附属設備の取得価額の全額を建物本体に含めて減価償却費を計算すべきであると主張しています。この方法によると建物附属設備部分の取得価額も建物附属設備の耐用年数よりも長い年数である建物の耐用年数で減価償却費が計算されるため、計上できる減価償却費は少なくなり負担すべき納税額が増えてしまいます。

また税理士側も建物と建物附属設備を資産分解するには、地方公共団体から再建築費評点数算出表を取得したり、その後評点数を集計したりと労力がかかるから全額を建物として処理した方が容易です。減価償却費の合計額は耐用年数を過ぎたら結局は同額になることを理由に検討もしない方もいます。

もし確定申告を依頼している税理士が中古のマンションを資産分解していない場合には、確定申告を初年度に税務署に提出する前に「再建築費評点数算出表を用いて取得価額を建物と建物附属設備に資産分解してくれませんか?」と相談することをお勧め致します。

7. まとめ

中古のマンションを購入した場合には内訳が分からないため全額を建物として減価償却費を計算するのでは無く、建物と建物附属設備とにきちんと資産分解した上で計算した方が投資前半期で多くの費用を計上でき早期に投資資金を回収することが可能となります。

再建築費評点数算出表を活用するには市役所に連絡をして資料をもらったり中古のマンションの資産分解を行ったりと作業は大変ですが、回収した資金で新たに別の投資を始めることもできるといったメリットも大きいため挑戦してみては いかがでしょうか?

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