交際費の取り扱いが令和6年4/1から変わります!接待交際費を多く計上している企業は必見です
令和6年度の税制改正で交際費の取り扱いが変わります。どのように変わるかについて詳しく説明致しますので、接待交際費が多い企業の方は是非このブログをお読み頂けたら幸いです。特に資本金の額が大きい法人はメリットが大きい改正となっています。
目次
1. 交際費から除かれる飲食費の範囲が拡大します
飲食費は1人当たりの支出金額がこれまで5,000円以下であった場合には「交際費」ではなく「会議費」として会計処理していました。
令和6年4/1からこの会議費にできる飲食費の範囲が広がり、1人当たり10,000円以下になります。取引先と会食した場合には、1人当たり5,000円を超えることが多いため企業にとっては望ましい改正と言うことができます。
【事例】
令和6年4/1に取引先と弊社の役員の計5人で会食を行いました。支払金額が45,000円(税込価格)だった場合の会計処理(税込経理)を教えてください。
⑴改正前
交際費 45,000円 / 現金預金 45,000円
⑵改正後
会議費 45,000円 / 現金預金 45,000円
【解説】
改正前の場合には1人当たりの飲食費が9,000円(45,000円÷5人)であり5,000円を超えるため交際費に該当していましたが、改正後は1人当たり10,000円以内でしたら交際費から除くことができるため会議費として会計処理することになります。
交際費ではなく会議費として会計処理することでメリットはあるのですか?
交際費は原則損金不算入として扱われるため、節税の観点から交際費よりも損金に計上できる会議費として会計処理する方が望ましいです。
しかし期末資本金の額が1億円以下である法人は正直あまり気にする必要はありません。なぜなら定額控除限度額が800万円もあるからです。
つまり交際費が年間800万円を超えない限りは交際費として会計処理していても損金不算入になることはありません。
税理士として多くの会社を見てきましたが、流石に交際費が年間800万円を超える会社は見たことがありません。もし超えるのでしたら、まずは経費の見直しをするべきだと考えます。
従って定額控除を適用できない資本金の額が1億円を超える法人が今回の改正でメリットを享受することになると言えます。
2. 留意事項
⑴消費税の経理処理
法人が税込経理をしているか、税抜経理をしているかで判定の基準金額が変わります。例えば1人当たり11,000円(税込金額)を支払ったとします。
【税込経理の場合】
交際費 11,000円 / 現金預金 11,000円
1人当たりの支出金額が1万円を超えるため交際費として会計処理します。
【税抜経理の場合】
会議費 10,000円 / 現金預金 11,000円
仮払消費税等 1,000円
税抜経理を採用している場合には1人当たりの支出額が1万円以下であるため、会議費に該当します。つまり税抜経理の場合には税抜金額で1人当たりの支出額が1万円以下であるか否かを判定します。税抜経理を採用するメリットの1つと言うことができます。
⑵社内飲食費
1人当たり10,000円以下である飲食費は取引先等の外部の方も会食に参加している必要があります。会社の役員や社員、これらの方々の家族しか参加していない会食は社内飲食費に該当し、金額に関わらず交際費として会計処理しますのでご注意ください。
なお、専ら従業員の慰安のために行われる忘年会等の費用は、参加者が会社内の人だけだったとしても社内飲食費に該当せず、福利厚生費として会計処理します。
3. 書類の保存
飲食費を会議費として会計処理するためにも、きちんと証憑資料を残しておくことが大切になります。お店から頂いた領収書だけでなく、参加した人数や会食に参加した取引先の名称も領収書にメモして残していたり、エクセルで管理しておくことをお勧め致します。
4. 損金不算入
交際費は原則全額が損金不算入(支出しても法人税法上、損金として計上されないことを意味します。)として扱われますが、法人の区分によって一定の金額まで損金に算入することが認められています。
⑴期末資本金の額が1億円以下である法人
下記の①➁のいずれか多い金額を超える交際費の金額が損金不算入となります。
①800万円(定額控除限度額)
※事業年度が1年未満の法人については下記の算式で算出した金額となります。
800万円×事業年度の月数÷12ヵ月
➁接待飲食費×50%
※接待飲食費には社内飲食費を除きます。
【注意事項】
期末資本金の額が1億円以下である法人であっても、資本金の額が5億円以上の法人に100%支配されている法人であったり、通算完全支配関係がある他の通算法人の中に資本金の額が1億円を超える法人がいる場合には、⑴ではなく⑵の法人として扱われます。
⑵期末資本金の額が1億円を超える法人(⑶の法人を除きます。)
接待飲食費×50%を超える交際費の金額が損金不算入となります。
※定額控除は適用できないです。
【注意事項】
通算完全支配関係がある他の通算法人の中に資本金の額が100億円を超える法人がいる場合には、⑵ではなく⑶の法人として扱われます。
⑶期末資本金の額が100億円を超える法人
支出した交際費の金額の全額が損金不算入となります。
⑷適用期限の延長
中小法人に係る損金算入の特例(定額控除限度額800万円のことを指します。)及び接待飲食費に係る損金算入の特例(接待飲食費×50%のことを指します。)の適用期限が3年延長され、令和9年3/31までの間に開始する各事業年度に支出する交際費の金額が適用対象となります。
この延長が無ければ期末資本金の額が1億円以下である法人も交際費が全額損金不算入となるため(期末資本金の額が1億円を超え100億円を以下である法人は、接待飲食費に係る損金算入の特例のみが影響します。)、3年間延長されたことは企業にとっては望ましい形と言えます。
5. まとめ
今回の税制改正で交際費から除かれる費用の判定基準を1人当たり5,000円以下から10,000円に変更した趣旨として、飲食費に係るデフレマインドを払拭する観点であると説明をしています。この変更がどう影響するかは不明ですが、コロナで打撃を受けた飲食業にとっても望ましい改正と言うことができます。
前述しましたが、資本金の額が1億円以下である法人は年間800万円の定額控除限度額があるため、よほど交際費が多い法人以外は1人当たりの支出額が5,000円以下から10,000円に変更しても影響は無いと言えます。
しかし私はそれでも会計上ではきちんと1人当たりの支出金額が10,000円以下であるかについて判定する必要があると考えます。なぜなら前年度比較をする上で交際費と会議費はきちんと分けて管理することで、会社の経費削減に取り組めるからです。
税理士事務所スプリングでは月次報告する際に、試算表を渡して終了ではなく1つ1つの勘定科目ごとに前期同月比較をして利益に大きな影響を与える項目があれば都度お客様に報告するようにしています。
その際に会議費よりも金額的に高い交際費に重点を置くため、1回1回の取引をきちんと判定することが前期比較をする上で正確な報告をするためにも重要となると考えています。
税理士事務所スプリングでは申告書を税務署へ提出するだけではなく、お客様の事業発展に税務面や会計面で貢献するためにコンサルティングにも力を入れています。事業を発展させたいという強い思いをもった経営者の方は是非お問い合わせください。
令和6年度の税制改正の記事として下記のブログも作成致しました。今回の税制改正を詳しく把握したい方はこちらのブログもお読み頂けたら幸いです。